俺はノートパソコンの沼にハマった。
ノートパソコンはデスクトップパソコンと違い単純なパーツの寄せ集めじゃない。特に最近の薄型のノートパソコンであるウルトラブックはパーツをひとつも換装できないものも多く、ディスプレイやスピーカー、キーボードなど、まとめて一つの製品として提供されているため、どこかに不満があれば、そのパソコンを使い終わるまで悩みが続く。「メモリなんて足りなくなれば追加すればいいか」が通用しない。
だからウルトラブックを選ぶ基準は使えば使うほどシビアになる。それは俺も例外ではなかった。この記事は無駄に基準がシビアになった俺が理想のノートパソコンを追い求めた軌跡だ。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
課題1 容量不足
事の発端は2017年7月まで遡る。2016年4月にサブ機として購入した超格安パソコンE200HAの容量不足がついに訪れた。
ASUSが3万円台で提供しているE200HAは、スペックを最低限に抑えることで、格安価格で買えるVivoBookシリーズの一つだ。(951グラム!!超軽量格安ノートパソコンASUS Vivobook E200HA購入レビュー!)
このパソコンの問題はわずか32ギガというストレージ容量をOSが半分以上専有していることだ。必要なアプリをインストールして残り10ギガ、5ギガと減っていき、ついに起動するたびに容量不足のエラーメッセージが表示されるようになった。買い替えだ。
この反省を活かして、次買うパソコンはスペックに不満がなく、見た目にもいいもの、5年以上使えるものを買おうと決意した。つまり今話題の薄型高性能ノートパソコン、ウルトラブックだ。俺は新しいパソコンを買うべく価格ドットコムを毎日穴が空くほど眺め続けた。ここで俺が選択したのがASUSのZenBookシリーズの中でも1年前に発売された型落ちモデル、UX305UAだ。
ZenBook UX305UA
UX305UAはとにかく衝撃的だった。
不満のない快適な動作、アルミボディの高い質感、美しいモニタ、10時間の長時間バッテリーと、これだけでも素晴らしいのに、極めつけは感動的な音質だ。
ZenBookの開発チームの音質に対するこだわりに心を打たれ、これがウルトラブックの底力かと、ますますUX305UAが好きになった。(【レビュー】ultrabook「ZenBook UX305UA」とギリギリまで迷ったultrabook達を紹介したい)
スペックを見てみてもこれだけ違う。前使っていたE200HAと比べて圧倒的で、動きもサクサクだった。
E200HA(旧) | UX305UA(新) | |
液晶サイズ | 11.6 | 13.3 |
解像度 | 1366×768 | 1920×1080 |
CPU | Atom x5-Z8300 | Core i5 6200U |
CPUスコア | 1200 | 4013 |
メモリ容量 | 2 | 8 |
ストレージ | 32 | 128 |
駆動時間 | 12 時間 | 12 時間 |
重量 | 0.98 kg | 1.3 kg |
サイズ | 286x17.5x193.3mm | 324x16.05x226mm |
その他 | microHDMI端子 | microHDMI端子 |
USB3.0 | USB3.0 | |
- | - | |
microSDカードスロット | SDカードスロット |
しかしわずか1週間後、快適ウルトラブックライフを送っていた俺に悲劇が訪れる。同じ価格帯で更にスペックが高いTOSHIBA dynabook V62に出会ってしまったのだ。どうしてこの端末の存在に気付かなかったんだ。俺は愕然とした。同じ価格でスペックが更に高い端末があることを知っていたら果たしてZenBook UX305UAを購入していただろうか、いやしない(反語)
dynabook V62
衝動を抑えられなかった俺はUX305UA購入からわずか1週間でTOSHIBAのdynabook V62を購入した。しかしこの端末によって俺はカタログスペックが全てではないと思い知ることになる。
dynabook V62を購入したからにはZenBook UX305UAを売ることになるなと思いながらV62をセッティングしているときに違和感を感じた。まずタッチパッドが小さくてスクロールがしにくい。
そしてharman/kardonと共同開発したくせにスピーカーの音質が悪い。極めつけはファンが回りすぎるしうるさい。
スペックだけ見てみるとdynabook V62はバッテリーやCPU、重量の面で上回るが、カタログではわからない不満点が多かった。
UX305UA(旧) | V62(新) | |
液晶サイズ | 13.3 | 12.5 |
解像度 | 1920×1080 | 1920×1080 |
CPU | Core i5 6200U | Core i5 7200U |
CPUスコア | 4013 | 4677 |
メモリ容量 | 8 | 8 |
ストレージ | 128 | 128 |
駆動時間 | 12 時間 | 17 時間 |
重量 | 1.3 kg | 1.099 kg |
サイズ | 324x16.05x226mm | 299x15.4x219mm |
その他 | microHDMI端子 | - |
USB3.0 | USB3.0 | |
- | USB3.1 Type-C | |
SDカードスロット | - |
特にスピーカーの音量の小ささと音質が許せない。このスピーカーで音を聴くたびに俺はV62を嫌いになるだろう。バッテリーなんて10時間持てば十分だし、CPUの差も感じない。V62を選択する理由はないと判断して1週間後にV62を手放した。
痛手はあったがこれも勉強だ。こうして俺はZenBook UX305UAの完成度が高いことを改めて思い知ったのだった。
課題2 母のパソコン
それから3か月後、ZenBook UX305UAで満足いくウルトラブックライフを送っていた俺に事件が起きた。母がパソコンを買い替えたいから選んでくれというのだ。これ自体は別に大したことではない。適当にパソコンを見繕ってやればいいだけの話だ。しかし俺の拘りがそれを許さなかった。
最期のパソコン
俺の親はもう70いくつだ。老い先短い俺の親はもうこれからいくつもパソコンを買うことはないだろう。それならばせめて妥協のないパソコンを選んでやりたい。そう思いながらまた価格ドットコムを穴が空くほど眺めていたが、価格と性能のバランスに納得できなかった。
基準
その時に検討していたスペックは、フルHDモニタ、15.6インチ、core i5、8ギガメモリ、SSD128ギガ以上だ。高すぎるスペックではないが、70以上の人間が使うパソコンとしては高いだろう。だが、おそらくこれが最後のパソコンになる、妥協はしたくなかった。そしてこの条件だと最低でも8万円を超えるくらいの価格になり、俺が中古で購入したZenBook UX305UAの7万円を上回る。
決断
そこで俺は俺が使っていたUX305UAを3万円で譲ることにした。俺が認めた最高のパソコンだ。画面は13.3インチと少し小さいが、それを補って余りある質感と音質がある。それに下手によくわからない新品を購入して失敗したくなかった。
俺のがない
ここまでで鋭い人ならわかると思うけど俺のサブ機がなくなる。できれば安心のUX305UAをもう一台欲しいが、中古市場はナマモノだ。こんなに古く、人気のないパソコンが早々7万円台で手に入ることはない。別のパソコンを検討する必要があった。
ZenBook UX310UQ
その結果次に俺の手元にやってきたのはASUS ZenBook UX310UQだ。これは中古価格8.5万円だった。UX305UAと比較するとCPUの世代が上がり、キーボードにバックライトが付き、SSDが128ギガから256ギガに増えた。しかも安心のZenBookだ。ボディの質感も高い。
これがスペックだ。
UX305UA(旧) | UX310UQ(新) | |
液晶サイズ | 13.3 | 13.3 |
解像度 | 1920×1080 | 1920×1080 |
CPU | Core i5 6200U | Core i5 7200U |
CPUスコア | 4013 | 4677 |
メモリ容量 | 8 | 8 |
ストレージ | 128 | 256 |
駆動時間 | 12 時間 | 9 時間 |
重量 | 1.3 kg | 1.4 kg |
サイズ | 324x16.05x226mm | 323x18.35x223mm |
その他 | microHDMI端子 | HDMI端子 |
USB3.0 | USB3.0 | |
- | USB3.1 Type-C | |
SDカードスロット | SDカードスロット |
UX305UAに劣るところもあるが、全体的なスペックアップを果たした。特にビデオカードを別で搭載していて、映像描写に強いのが嬉しい。
とはいいつつも俺はモヤモヤしていた。そして全体的なスペックではなくて、俺にとっての付加価値だけを考え始めた。人間冷静になると本質が見えてくるものだ。
1.5万円の価値
UX305UAの購入価格7万円に対して、UX310UQは8.5万円。
CPUのグレードは上がったが、実際の利用で違いを感じることはない。ビデオカードが実装されたが大した作業はしない。つまり実際にスペックアップを実感できるのはキーボードバックライトの有無だけだった。俺はこのイルミネートキーボードのために1.5万円も払ったのか。
さらなる不満
待ってほしい、それだけじゃない。UX310UQは無駄にビデオカードを搭載したことで本体が2ミリも分厚く、明らかに不細工になった。しかもビデオカードが無駄にバッテリーを消耗するお陰で持続時間は実質7時間程度まで減少していた。今までとは違うバッテリーの減り方に、パーセンテージ数値から目が離せずノイローゼになっていた。
1.5万円の価値
つまり、1.5万円追加で払って得られたものは、3時間短いバッテリーと、2ミリ厚い本体と、イルミネートキーボードだ。納得できない。UX310UQは全く悪いパソコンではない。美しい画面、精巧なボディ、大きなタッチパッドと、ASUSがZenBookシリーズとして送り出しているだけのことはある信頼の品質だ。だが俺にとってビデオカードは何の付加価値もない。
しかもharman/kardonと共同開発しているはずのスピーカーの音質は明らかにUX305UAを下回っていた。
全てが高い品質ではあるが、こと俺の用途、俺の求めるものに関してはUX305UAが上回った。今更UX305UAがとんでもない名機だということに気づいたのだ。俺は別のパソコンを物色し始めた。
ZenBook Flip UX360UA
次に俺が選んだのはこれまたZenBookのUX360UA ZenBook Flipだ。
ZenBook初の2in1端末であり、俺が愛用していたUX305UAと同時期に発売された上位グレード端末にあたる。CPUにi7-6500と、512ギガSSDを搭載している。本体はさらに2ミリ薄く、100グラム軽くなり、
イルミネートキーボードだけでなく指紋センサーもついた。
これで中古価格8.5万円だ。唯一グレア(光沢)液晶で反射しまくるのが気になるが、そんなものは光沢防止シートでも貼れば済む。
スペックはすべての面でUX305UAを上回った。
UX305UA(旧) | UX360UA(新) | |
液晶サイズ | 13.3 | 13.3 |
解像度 | 1920×1080 | 1920×1080 |
CPU | Core i5 6200U | Core i7 6500U |
CPUスコア | 4013 | 4466 |
メモリ容量 | 8 | 8 |
ストレージ | 128 | 512 |
駆動時間 | 12 時間 | 12.3 時間 |
重量 | 1.3 kg | 1.3 kg |
サイズ | 324x16.05x226mm | 321.6x13.9x219.1mm |
その他 | microHDMI端子 | HDMI端子 |
USB3.0 | USB3.0 | |
- | USB3.1 Type-C | |
SDカードスロット | SDカードスロット |
しかし俺にも学習能力はある。dynabook V62の二の舞を踏むわけにはいかない。ウルトラブックはスペックだけでなく、カタログで見えない使用感も重要だ。
安心のZenBook
ということで初期設定をするもさすがのZenBookというだけあって安心感が違う。使用感はUX305UAを踏襲していて、不満はなかった。
特に感動したのがその音質で、またもやharman/kardonと共同開発したスピーカーはこれ一台で家のオーディオを賄えるんじゃないかと思えるほど音量が大きく、低音も強くなっていた。このあとに発売されたUX310UQで音質が落ちているので、このころのZenBook開発チームの耳はピークだったんだと思う。
UX360UAはここまでは完璧だ。とうとう出会ってしまった。これだけの違いがあるのであれば、と1.5万円の上乗せも辞さない覚悟を決めかけた。
不満点
ところでさっきから何かがうるさい。確認するとどうやらUX360UAのファンだ。ノートパソコン特有のキーンという甲高い音がずっと響いている。こんな音UX305UAでは無かった。やばい、なんかモヤモヤしてきた。
ファン対策が決め手
ということで対策すべく原因を考えた。まず旧機UX305UAは全面が熱伝導率の高いアルミボディだ。これにより放熱効率が高い。これに対してUX360UAは天板がアルミだが、本体部分はマグネシウム合金製だ。これはアルミよりも熱伝導率が低く、放熱効率も下がり、熱をためやすい。さらにi7にまでスペックアップしたCPUのお陰で発熱量が増え、ファンが回転しやすくなった結果、不快なファンの回転音に繋がっていた。
と仮定したんだけどどうやら違った。実際にSpeedFanというアプリを入れてファンの回転状況とCPUの発熱量を見たところ、UX305UAもUX360UAもほとんど変わらなかった。
確認したところ、旧機UX305UAはそもそも音が小さいファンが搭載されていることが分かった。それに対してUX360UAは2in1に対応すべくファンの排気口の位置が変わり狭くなったため、そもそもファンが違うものになった。
UX305UAのファン排気口は大きい
UX360UAのファン排気口は小さい
調べたところUX360UAはCPUが30℃を超えた段階でファンが回転していることが分かった。ノートパソコンのCPUにおいて、30℃なんて常時超えていると言ってもいい。だれだこんなクソ設計にした無能は。ならば回転開始温度を45℃に変更してしまえばいい。これでファンが回らなくなった(NoteBookFanControl導入【使えないSpeedFanに代わってファンを制御】)俺の使い方では起動時以外CPUが50℃を上回ることはなかった。
決断の時
つまりすべての不満が解消された。晴れてUX360UAを手元に残すことを決めて、現在はデータの移行作業を行っている。完了したら初期化して旧機UX305UAを親に送る予定だ。なにも期待していなかった2in1機能だが、いつものサイトを巡回するときに、タブレットモードにして縦に見れるので地味に活躍している。
最後におなじみとなった樹のシートを貼るカスタムを施した。(本物の木を貼って世界に1つのおしゃれultrabookにDIYする)
さらに、このウルトラブックは壊れるまで添い遂げるつもりなので、パームレストとキーを保護するDIYを施した→本物の木でキーとパームレストを保護する
やっとultrabookの沼から脱出できた。
あとがき
一番初めにZenBook UX305UAを買わずに、dynabook V62を購入していたら、ここまでウルトラブックに触れられなかったし、ZenBookシリーズと出会えず、その完成度に気付くこともなかっただろう。ZenBookシリーズはZenBook3 UX390UAばかりが注目を集めていて、それ以前の端末の知名度が低いおかげで、元々コスパのいいのに中古市場ではさらに安くなっている。中でも2016年以降のZenBookは名機ばかりで、それがありえない値段で購入できてしまう。
パソコンの購入となるとどうしても最新端末、ハイスペック端末を重視してしまいがちだが、自分の用途を考えたうえで、それに必要なスペックの端末を最新端末以外からも幅広く探すことで、思わぬコスパの端末に出会うことができる。2016年から2017年にかけて発売されたZenBookは穴場の名機だらけだし、ウルトラブックデビューを考えている人には手放しでおすすめしたいシリーズだ。