中国スマホの購入にあたって躊躇するポイントは日本語対応とか周波数とか色々あるんだけど、その中の一つに技適マークがある。
今回は中国スマホ等の技適マークが無いデバイスを日本で使うケースにおいて、法律的にどうなのか、そして実際のところはどうなのかということをまとめる。
現在中国スマホの購入を迷っている人は参考にしてほしい。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
技適無しのスマホは法律的にはアウト?
そもそもの始まりは技適マークがついていないスマホが法律的にはアウトになる「可能性がある」ということ。というのも基準が超曖昧で、総務省の解説ページには
「 技適マークが付いてない無線機を使用すると電波法違反になる場合があります。」(引用:技適マーク、無線機の購入・使用に関すること)
と書かれているだけ。
つまり、技適マークのついていないスマホの利用 = 即電波法違反ではない。あくまで電波法違反になる可能性がある、ということ。
※後日総務省に電話で確認したところ、法律的には即アウトになるとのこと。
技適マークの存在意義
電波法違反について判断するためには、技適マークの存在意義を理解する必要がある。
技適マークは簡単に言うと電波に関する手続きを簡略化できる総務省発行の免罪符だ。
技適マークを取れば手続きがいらない
スマホとかWiFiルーターは電波を発信する以上は無線局に該当する。
本来であればスマホ含む無線局は総務省に検査してもらって免許を交付してもうらう必要があるんだけど、スマホは数が多すぎる。そこで手続きを簡略化するためにできたのが技適マークなんだ。
一定の基準を満たす無線局であれば技適マークを取得することで総務省への申請~免許交付手続きを簡略化できる。
海外スマホ利用で捕まった人はいない
ところで技適マークが電波法に違反するかどうかとは別問題として、現状技適マークがついていないスマホを使用して捕まった人(罰金、懲役)は一人もいない。(参考:「技適」なしスマホを使うと罰せられる? 覚えておきたい技適の話)
これは先ほどの引用の、
「 技適マークが付いてない無線機を使用すると電波法違反になる場合があります。」(引用:技適マーク、無線機の購入・使用に関すること)
太文字部分の電波法違反に該当すると判断された人は今のところいないと考えることができる。
と思ったけど後日総務省に電話確認すると法律的には即アウトだった。つまり法律的にはアウトだけど、今のところ捕まった人はいないし捕まえる動きも無い。
電波法違反の判断基準はどこにある?
多くの人がウェブサイトやツイッターで堂々と海外スマホの使用を公言しているというのに誰一人として捕まった人がいない。
それなら電波法違反ってなんなんだ。技適マークとスマホの関係を探るためには電波法違反に該当するケースを把握する必要がありそうだった。
総務省の電波監視業務とは
電波法違反のメカニズムを理解するためには、総務省の電波監視業務の流れを把握するのが重要。
総務省は24時間体制で違法電波を監視
日本の電波を管轄している総務省は、電波監視システム「デューラス(DEURAS)システム」を通して24時間体制で違法な電波が無いかを日々監視している。
違法な電波を発見した場合はその発信源を特定して、発射停止の命令を下す、というのが総務省の電波監視業務の役割だ。
電波法違反で罰則が課される流れ
電波を監視している総務省にできるのは電波の発車停止命令までで、電波法違反に該当した場合の「一年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せるのは警察だ。
つまり電波法違反に関しては、発見できるのは総務省で、処罰できるのは警察という非常にややこしい構図になっている。
総務省も警察も単独では罰則を課せない
電波法違反については総務省単独では摘発できないし、警察だけでは技適マークがないスマホの電波が違法かを判断できない。
総務省と警察、両方のタッグが実現して初めて電波法違反として検挙される。
※総務省に電話で確認したところ、警察も違法電波を探知する機械を保有しているから、警察単独での発見、検挙も可能とのこと。
総務省が電波を監視する目的
そもそも総務省が電波を監視する目的は、公共の財産である電波について、混信を排除して良好な電波利用環境を維持するためなんだ(参考:電波監視業務のご案内)
要約すると、電波は共有財産だから勝手に使われないように見張るねということ。
電波は社会システムの基盤
現代社会において電波は放送、携帯電話、ネットワーク機器や家電などで使われていて、社会システムの維持に欠かせない存在なんだ。
そんな社会システムを維持するためにも、総務省は電波を管理することで使用を許可制にして、更に違法な電波が発信されないように日頃から監視している。
違法電波で混信することによる弊害
同じ周波数の電波は同じ空間に二つ存在できない。つまり、携帯電話用に使われている周波数帯を、より強い出力の個人的な放送(不法市民ラジオ)に使ってしまうと、その周辺一帯で携帯電話が使えなくなる。
これが電波の混信で、こうならないように総務省が違法電波を監視しているということ。
違法電波を逆手に取ったのがジャミング装置
立てこもり事件で警察が行う電波妨害も全く同じ原理で、ジャミング装置を使って携帯電話と同じ周波数帯の、より強い出力の電波を発信することで付近一帯の携帯電話を無力化して犯人の外部連絡を遮断している。
電波法違反に該当するケース
誰かが個人的に電波を発信することで、その電波帯域の本来の役割を果たせなくなるケースは、
「公共の財産である電波を不法利用しているし、混信によって良好な電波利用環境を維持することができていない」
状況なので、総務省によって電波法違反に該当すると判断されて、警察によって検挙される。
中国スマホは電波法違反に該当しない?
逆に考えると総務省が中国スマホの違法電波を発見したところで、技適マーク付きのスマホと同じ電波を技適マーク付きのスマホと同じ目的で使用しているに過ぎず、
「混信がない良好な電波利用環境も保たれている」
のであれば取り締まる意味がない。
これが現状技適マーク無しのスマホが野放しにされている理由で、恐らくこの野放しは今後も続く。なぜなら電波法は技適マーク無しのスマホを取り締まるための法律ではないから。
総務省が違法電波を発見する方法
ところで違法電波は、総務省の監視システムで異常な出力の電波を検知するか、タレコミによって発見される。その後に実際に総務省が実地に赴いて違法な電波を確認する。
総務省は中国スマホの違法電波を発見できない
ところが中国スマホの場合、発信している電波の性質は技適マークが付いているスマホと全く同じ。つまり総務省は中国スマホが発信する違法電波を発見できない。
※電話で総務省に確認したところ、お答えできませんとの回答。つまり発見できないと推測。
総務省「我々は禁止されていますと言うだけ」
実際に技適マークが無いスマホを使っていた人が総務省に問い合わせたところ
総「我々としては、技適マークの無い機器を使うことは電波法で禁止されていると言うだけです。話を聞く限りは海外製のスマホを使っただけで、悪質なものではなさそうですので、それ以上の事は無いです。」(引用:技適マークのない機器で無線を使っていたので自首してきた。)
という返答を受けている。総務省としても実害が無いために取り締まるつもりは無さそうだ。
技適マーク無しスマホの扱い
ここまでたくさん断言しておきながら、書いた内容は全て推測の域を出ないんだけど、日本に溢れる中国スマホ使用者が一人も捕まっていないのはこういうことなんだと思う。
とりあえず技適無しスマホは大丈夫
中国スマホを使っている限り違法スマホ使うなって言う人はいるだろうけど、中国スマホが違法かどうかを判断するのは総務省で、検挙するのは警察だから、外野がなんと言おうと影響はない。言わせておけばいいだけという話。
【要申請】技適無しスマホを合法的に使える
なぁなぁになっている日本の技適無しスマホを取り巻く環境を放置すると面目が立たないと判断したのか、遂に日本でも技適無しのスマホを合法的に使う手段が誕生した。
それが「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」だ。⇒ 申請ページ
この制度では誰でもオンラインから技適無し無線局の使用申請をすることが出来て、一度申請すれば申請した目的の範囲内で180日間は合法的に使用できる。180日が経過しても目的を変えて改めて申請すれば名目上は通る。
つまり、総務省としても合法的に技適無しスマホを使う手段を設けることで「禁止されていますと言うだけ」という中途半端な回答を「申請をお願いします」に置き換えることで、違法状態を放置しなくて済む一応のけじめをつけた形で海外スマホと技適問題は終幕した。めでたしめでたし。